カラダの老化や疾病と関わりのあるAGEs

近年、 AGEsを測定する技術の研究が進み、老化や疾病とAGEsとの関連が明らかになってきました。 ここでは、AGEsとカラダの機能低下や疾病のメカニズムについてご紹介します。

皮膚の老化

三重らせん構造をもつI型コラーゲン分子は、規則的に架橋された構造をもち、その結果、弾力など機械的な性質をもっています。ペントシジンのような架橋性AGEsは、コラーゲン分子間を不規則に架橋します1)。その結果、コラーゲンの性質が変化し、弾力性が低下します(図1)。

図1 コラーゲンにおけるAGEsの架橋と弾力性

肌のコラーゲンが糖化によって柔軟性が失われると、皮膚の粘弾性などの皮膚の機能に影響し、肌のしわやたるみの原因になります。また、AGEsの一種であるCML(カルボキシメチルリジン)は、肌の弾力や潤いに役立つエラスチンやヒアルロン酸を造りだす線維芽細胞にアポトーシス(細胞死)を起こさせることが知られています2)

紫外線も皮膚のAGEsの生成を促進する要因になります。皮膚の弾力に関わるタンパク質であるエラスチンに紫外線を照射するとCMLが増加します。ヒトの皮膚では、年齢を重ねるとともに皮膚のエラスチンが糖化していることが報告されています3)

骨の老化

骨の体積の半分はコラーゲンが占めています。骨を鉄筋コンクリートの構造物に例えると、コラーゲンは鉄筋で、カルシウムのようなミネラルはセメントに例えることができます(図2)。糖化が進むと、骨のコラーゲン線維がペントシジンのようなAGEsによって架橋され、弾力性を失います。そして、鉄筋の役割をするコラーゲンが弾力性を失い硬くなると、骨が衝撃を吸収できなくなり脆くなります。動物実験で、AGEsが蓄積した骨は強度が低下するという結果が得られています1)

図2 骨の構造は鉄筋コンクリートにたとえることができます。

骨粗しょう症は骨強度が低下する疾患ですが、2000年にNIH(アメリカ国立衛生研究所)にて、骨の強度はミネラルの量を反映する骨密度と、骨の材質の良し悪しを示す骨質の双方が反映すると定義されました4)(図3)。骨のコラーゲンの糖化は骨質に影響を及ぼします。

図3 骨粗しょう症の新しい定義(NIH 2000年)
骨強度は骨密度と骨質の双方を反映すると定義されています。

血管の老化

カラダの細胞にはAGEsが結合するAGEs受容体(RAGE)が存在し、この受容体に特定のAGEsが結合すると、炎症を引き起こすシグナルが放出されます5)。例えば血中のAGEsが血管内皮のRAGEに結合すると、炎症が引き起こされます。血管内での炎症は動脈硬化のリスクを増大させます。さらに、AGEsが結合したRAGEは血管の弛緩に作用する一酸化窒素(NO)の産生を減少させることにより、血管内皮機能を低下させます(図4)。

図4 AGEs受容体(RAGE)の活性化と情報伝達
Circulation. 114, 597-605,2006を改変引用

引用文献:

1) Osteoporos Int 21, 195-214, 2010
2) J Biol Chem 280, 12087-12095, 2005
3) J Invest Dermatol 108, 797-802, 1997
4) AGEsと老化 メディカルレビュー社 161-172, 2013
5) Circulation 114, 597-605, 2006

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