生活習慣とカラダの糖化
ヒトのカラダは日々、 老化物質AGEsによる「糖化ストレス」を受けています。AGEsの蓄積レベルは日頃の生活習慣によって差がつきます。ここでは食事などの生活習慣とAGEsの関係について紹介します。
食習慣によって変わるAGEs蓄積レベル
糖尿病患者において、高血糖を抑制すると血中のAGEsの濃度が減少することが知られています1)。このことから、食後血糖値の高い状態はAGEsの生成に影響を及ぼすと考えられます。日々の食事の摂り方や内容を工夫することにより、食後血糖値の上昇は抑えられます。
食物繊維により食後の血糖値上昇を防ぐ
糖質の前に食物繊維の豊富な野菜を食べるなど、食べる順番を変えるだけで、血糖値の上昇を抑えることが出来ます(図1)2)。これは、ベジタブルファーストという食習慣として知られています。また、水溶性食物繊維である難消化デキストリンは、マルターゼなど糖分解酵素を阻害し、糖の吸収を遅らせます。このため、難消化デキストリンは、「糖の吸収を抑え、血糖値の上昇を抑える」ことを訴求した飲料などに利用されています。
糖質の摂り過ぎや、糖質に偏った食事は避ける
甘いものを控えることを心がけている方は、心がけていない方よりもAGEs蓄積量レベルが低い傾向にあるという報告があります3)。また、糖質を摂取する際、タンパク質や脂質を同時に摂取すると血糖値の上昇が抑えられます4)。言い換えれば、糖質に偏った食事や炭水化物の重ね食べは、食後の血糖値が上昇しやすい食習慣といえます。
AGEsの生成を抑える食品
AGEs生成の原因となるケトン体を減らすクエン酸
糖尿病ラットにおいて、クエン酸の投与によってケトン体の生成が抑えられ、目の水晶体のAGEsの蓄積が抑えられたという報告があります5)。
エネルギー産生を助け代謝をスムーズにするビタミンB群
ビタミンB群は代謝に関わる栄養素で、ビタミンB1は糖代謝に関わります。糖尿病ラットを用いた研究で、ビタミンB1誘導体(ベンフォチアミン)の投与で血清及び網膜、腎組織のAGEs蓄積が減少したという報告があります6)。また、ビタミンB6であるピリドキサミンの投与で、糖尿病ラットのAGEsの生成が抑制されたという報告があります7)。
糖とタンパク質の糖化反応を抑えるポリフェノール
ポリフェノールの多くは糖化反応を阻害しますが、吸収性などに差があるため、生体内での効果には大きな違いがあります。蕎麦などに含まれるルチンや、カテキンなどを含む緑茶は、動物実験でAGEsの生成を抑制したという報告があります8)9)。ヒト試験においては、マンゴスチンの果皮の水溶性ポリフェノール10)の摂取で、皮膚のAGEs蓄積レベルや血中のAGEs濃度が低下したという報告があります。
AGEs蓄積レベルに影響する日々の生活習慣
皮膚のAGEs蓄積量を反映する蛍光値を測定すると、定期的に運動する習慣がある人ほど、その年代の平均値より低くなっているという報告があります4)。適度な運動はAGEsの蓄積を抑えることができる可能性があります。また、中高年女性を対象に3ヶ月間の運動介入試験を行った結果、血中のAGEs濃度が減少しました11)。
日常生活において、過度な飲酒や、睡眠不足、紫外線などもAGEsの生成を進める要因となります12)13)。また、酸化ストレスはAGEsの蓄積を促進します14)。