糖化を抑える機能性食品の研究

日々摂取する食品で、カラダの老化物質AGEsの蓄積を抑制する研究についてご紹介します。

果物の女王「マンゴスチン」

マンゴスチン(Garcinia mangostana L.)は東南アジアで栽培される果樹で、その優美で繊細な味わいから「果物の女王」とよばれています(写真1)。果皮はポリフェノールを豊富に含み、タイでは古くから生薬として用いてきました1)。近年、果実だけでなく果皮を含んだ飲料などが販売されるようになりました。

写真1 マンゴスチンの果実
写真1 マンゴスチンの果実

糖化を抑えるマンゴスチンエキス

紫色のマンゴスチン果皮には、多くの種類のポリフェノールが豊富に含まれています1)。南国の果物であるマンゴスチンの樹は、毎日高温や紫外線に曝されています。マンゴスチンの白い果実は厚い果皮によって、紫外線や酸化ストレスから守られています。以前よりマンゴスチンの水溶性ポリフェノールは抗酸化作用が強いことが知られていました2)。そこで、このマンゴスチンエキスの抗糖化作用を調べたところ、AGEsの生成を抑制することがわかりました3)(図2)。

図2 マンゴスチンエキスの抗糖化作用
図2 マンゴスチンエキスの抗糖化作用
コラーゲンペプチドと果糖を混ぜ、37℃で6日間おくと、糖化が進み褐色になります。予めマンゴスチンエキスを0.005、0.01%添加しておくと、糖化が抑制されます。

糖化を抑えるエイジングケアのための食品原料として、マンゴスチン果皮を熱水で抽出したものが「マンゴスチンエキス」です。マンゴスチンエキスには多くの種類の水溶性ポリフェノールが含まれています4)。その中でもロダンテノンBという化合物は我々が、マンゴスチンに含まれることを初めて見つけた水溶性ポリフェノールです(図3)。ロダンテノンBにはAGEs生成抑制作用が認められました5)

図3 マンゴスチン果皮から得られた「ロダンテノンB」
図3 マンゴスチン果皮から得られた「ロダンテノンB」

マンゴスチンエキスの摂取はAGEsの蓄積量を減少させ、
皮膚の機能を改善する5)

30-40歳代女性11名に、マンゴスチンエキスを1日に100mg(ロダンテノンB 80μg)、12週間摂取してもらい、摂取前、摂取4、8、12週間後に皮膚のAGEs蓄積レベル、血中のペントシジン濃度、皮膚の粘弾性と水分値を測定しました。

皮膚のAGEs蓄積レベルは摂取4週間以降に低下しました。血中のAGEsの一種であるペントシジンの濃度も摂取8週間以降に低下しました(図4)。このように、マンゴスチンエキスの摂取はカラダのAGEsを減少させます。血中のペントシジン濃度を低下させた食品の報告は、マンゴスチンエキスが初めてです5)

図4 マンゴスチンエキス摂取による皮膚のAGEs蓄積レベルおよび血中のペントシジン濃度の変化
図4 マンゴスチンエキス摂取による皮膚のAGEs蓄積レベルおよび血中のペントシジン濃度の変化

皮膚の粘弾性は摂取4週間以降上昇しました。また、皮膚の水分値も摂取8週以降増加しました(図5)。このことから、マンゴスチンエキスの摂取は、皮膚のコラーゲンを糖化ストレスから守り、肌の粘弾性や潤いを改善することが明らかになりました。

図5 マンゴスチンエキス摂取による肌の粘弾性と潤いに対する効果効果
図5 マンゴスチンエキス摂取による肌の粘弾性と潤いに対する効果

糖化ストレスを抑えるマンゴスチンエキスの摂取は、肌の潤いを改善し、血管をしなやかにする6)

20-50歳代女性38名を2群に分け、マンゴスチンエキスを1日に200mg(ロダンテノンB 160μg)摂取する群、およびプラセボ群を設定し、それぞれ12週間摂取してもらい、摂取前、摂取4、8、12週間後の皮膚と血管の状態を評価しました。

マンゴスチンエキスの摂取により、皮膚(頬)の水分値は摂取8週間以降にはマンゴスチンエキスを摂取していないプラセボ群に比べ改善しました(図6)。

図6 マンゴスチンエキス摂取による肌の潤いに対する効果

血管の硬化度(しなやかさ)を示す指標であるAPI(Arterial Pressure Index)を改善し、動脈硬化などのリスクを反映しているAVI(Arterial Velocity pulse Index)も改善する傾向がみられました(図7)。APIとAVIは値が低いほど血管の状態が良好であることを示します。

図7 マンゴスチンエキス摂取による血管機能(APIおよびAVI)に対する効果
図7 マンゴスチンエキス摂取による血管機能(APIおよびAVI)に対する効果

このことから、糖化ストレスを抑制するマンゴスチンエキスの摂取は、肌の潤いや血管のしなやかさを改善する可能性があることが明らかになりました。

引用文献:

1) Phytother Res 23, 1047-1065, 2009

2) Pharm Biol 48, 55-62, 2010

3) 第9回糖化ストレス研究会, 2015

4) J Agric Food Chem 63, 7670-7674, 2015

5) J Clin Biochem Nutr 57, 27-32, 2015

6) Glycative Stress Research 5, 95-103, 2018

Page Top