2019年4月17日
カラダの糖化と認知機能の低下との関係
2012年の全国の65歳以上の高齢者における認知症患者数は約462万人と推定され、軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)の有病者数は約400万人と推定されています1)。さらに2025年には認知症患者が約700万人、実に高齢者の5人に1人になると見込まれています2)。認知症の内訳はアルツハイマー型認知症(AD:Alzheimer’s disease)が最も多く、高齢になると血管性認知症(VaD:vascular dementia)の割合が増加してきます。MCIは認知症とは診断されませんが、物忘れや記憶力の低下などの症状が認められ、認知症の前駆段階とされています。
ADの発症危険因子の一つとして糖尿病があります。1999年に報告されたオランダでの研究では、糖尿病はADの発症リスクを2倍に増加させることが報告されています3)。日本の久山町研究において、VaDは耐糖能異常をもつ方の発症率が高く、ADは糖尿病患者で発症率が高いことが報告されています4)。さらに、糖負荷後2時間血糖のレベルが高いほど、いずれも発症率が増大していました4)。このように、認知機能の低下とカラダの血糖値の状態には関係があることが示されています。
カラダの糖化によって生成するAGEsと、認知機能との関連も近年研究が進んでいます。AGEsの中でも特にグリセルアルデヒド由来のAGEs(Glycer-AGEs)は、神経細胞毒性が報告されています5)。さらに、Glycer-AGEsは、AGEs受容体(RAGE)に結合することで、神経細胞障害を引き起こし、ADの発症や進展に関係するといわれています5)。糖尿病とADを発症するマウスを用いた実験では、血管壁に多くのRAGEが発現し、炎症が進んでいることが観察されています6)。
最近、II型糖尿病患者において、MCI患者は、そうでない方に比べ、血中のAGEsレベルが高いことが報告されました7)。さらに、日本のアンチエイジングドックを受診した226名のデータにおいて、MCI「あり」と判定された方のAGEs蓄積レベルを示す皮膚の蛍光値は、「なし」と判定された方よりも高いことが報告されました8)。このことから、血中のAGEs濃度や、皮膚のAGEs蓄積レベルを調べることは、MCIのバイオマーカーとして、MCIの発見や予防に役に立つかもしれないと期待されています。