2019年3月28日
カラダのAGEsの蓄積レベルを簡単に測る方法
老化や疾病リスクの指標である体内のAGEsの蓄積量は興味があるところですが、AGEsを正確に定量することは非常に手間がかかります。AGEsの一種であるペントシジンの場合、測定サンプルを酸で分解してHPLC(高速液体クロマトグラフィー)で測定する方法や1)、抗体で検出するELISA法があります2)。さらに、測定する検体は採血などによらなければならず、測定される人にもかなりの負担がかかります。日頃からAGEsの蓄積量をモニタリングするためには、簡便で、負担のかからない測定手法が必要です。
AGEsの中には蛍光を発する性質をもつものがあります。糖尿病患者では皮膚にある特定の波長の光を当てると、反射した光の強度(蛍光値)が大きくなることが知られており、AGEsが蓄積していると考えられました3)。そこで、指に光を当てることで発生する、体内AGEs量と相関した微弱な蛍光強度を測定して、AGEsの蓄積レベルを評価する装置がシャープ株式会社より考案されました(図1)。その後、その技術を受け継いだシャープライフサイエンス社※1は、非侵襲(採血などが必要ない)で、だれもが簡便に測定するAGEsセンサを2017年に発売しました。皮膚の蛍光を測定する方法は、皮膚のメラニン量や、血管などに影響を受けるため、この装置では手のひら側の指先で測定する方法がとられました4)。AGEsセンサは、市町村、大学病院、クリニック、スポーツクラブ、スーパーマーケット、フードサービス企業、コンビニエンスストア、セルフ健康チェック企業、健康保険組合や薬局等で幅広い普及が始まっています。
※1:シャープライフサイエンス株式会社は2019年3月29日エア・ウォーター・バイオデザイン株式会社に社名変更されました。
AGEs蓄積レベルを測定する装置は、医療の現場でも疾病リスクを評価する装置として期待されています。糖尿病患者において、中指の蛍光値の測定値は、患者1人が抱える糖尿病合併症の数に応じて、明らかに高くなることが報告されています4)。これに対し、血糖値やHbA1cの値では、その患者がもつ糖尿病合併症の数との間には関係がありませんでした。皮膚の蛍光値は疾病リスクと関連がある運動習慣や、飲酒などの生活習慣にも関係があります5)6)。近い将来、AGEs蓄積レベルのモニタリングによる健康管理がもっと身近になるかもしれません。