糖化研究レポート

2019年11月15日

糖化を抑える機能性表示食品

運動不足や糖質に偏った食事、睡眠不足などの生活習慣により変動する体内でのAGEs(終末糖化産物)の蓄積量は、老化や疾病リスクと関わりがあります。体内のAGEs蓄積量を減らすためには、生活習慣の改善はもちろんのこと、日々摂取できる食品で、AGEsの生成を抑制することが考えられます。そこで、糖とタンパク質からAGEsができる糖化反応を抑制する食品成分の探索が、試験管内でなされ、緑茶や生薬など多くの成分の報告がされました1)2)。しかしながら、ヒトの体内でAGEsを抑えるような食品を作るためには、さらにその成分について、吸収性や体内での安定性、用量(1日の摂取目安量)などを検証しなければなりません。

南国の果物であるマンゴスチンの果皮に含まれる水溶性ポリフェノールは、ロダンテノンBを始めとする多くの種類のポリフェールによって構成されています3)。これらの中で、ロダンテノンBは強いAGEs生成阻害作用を持ち、マンゴスチン水溶性ポリフェノールの抗糖化作用に大きく貢献しています4)。このロダンテノンBを含むマンゴスチンエキスを1日100㎎摂取した試験において、皮膚のAGEs蓄積量を反映する蛍光値、血中のペントシジン濃度が減少させ、体内のAGEsの蓄積を抑制する作用があることがわかりました5)。食品成分を摂取して、ヒトの体内においてAGEsの一種であるペントシジンの濃度を減少させたことは、これが初めての報告になります。さらに、この時、摂取前に比べ皮膚の粘弾性や、水分値も改善しました5)6)

ペントシジンは、コラーゲン分子間を不規則に結びつけることが報告されています7)。これにより、コラーゲンの立体構造が影響を受け、肌の機能性に悪影響を及ぼします。また、肌のコラーゲンやヒアルロン酸は、線維芽細胞という細胞によって作られていますが、AGEsの一種CML(カルボキシメチルリジン)やCMA(カルボキシメチルアルギニン)はこの線維芽細胞にダメージを与えます8)9)。このように肌にAGEsができると、様々な悪影響(糖化ストレス)を受けます。加齢や生活習慣が乱れると肌の状態が悪くなるのは、糖化によるAGEsの影響を受けているのかもしれません。

機能性表示食品制度は、科学的根拠を基に機能性を表示するものとして、消費者庁に届け出られた食品です。今まで、カラダの糖化を抑制することを明記できる機能食品はありませんでした。しかしながら、抗糖化作用をもつマンゴスチンエキスを含むサプリメントを摂取するプラセボ対照二重盲検試験が実施され、肌の水分値を改善する効果が報告されました6)。これを根拠に商品名を「マンゴスティア」としたサプリメントが消費者庁に届出され、日本で初めての「糖化ストレスを軽減する」ことをメカニズムとし、肌の潤いを保持する機能性表示食品として受理されました10)。この画期的な機能性表示食品は2019年10月に発売され、これによりサプリメントを摂ってAGEsの蓄積を抑える糖化ケアが日常的に可能となりました。

引用文献:

1) Birkhauser, Besal, Boston, Berlin, p221-226, 1990
2) T Tradit Med 18, 107-112, 2001
3) J Agric Food Chem 63, 7670-7674, 2015
4) 日本生薬学会第63回年会 要旨集 p172, 2016
5) J Clin Biochem Nutr 57, 27-32, 2015
6) Glycative Stress Research 5, 95-103, 2018
7) Osteoporos Int 21, 195-214, 2010
8) J Biol Chem 280, 12087-12095, 2005
9) Anti-Aging Medicine 8, 82-87, 2011
10) 消費者庁 機能性表示食品DB, (届出番号E44)

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