糖化研究レポート

2020年9月30日

新型コロナウィルス感染拡大による生活環境の変化には、老化のリスクが潜む

老化の原因となっているカラダの糖化は、消費されずに余った糖とカラダのタンパク質が結びついて老化物質AGEsをつくる反応です。糖質の摂取量が増えたり、糖質の摂取量が変わらなくても運動量が減少すると、カラダに糖が余ります。これが糖化を引き起こし、カラダを老化させます。さらに、睡眠不足やストレスもカラダの糖化を進め、カラダを衰えさせる要因になります。

2020年4月、新型コロナ感染拡大前に比べて生活がどのように変化したかについて、1047名(18歳以上、54%が女性)にアンケート調査した結果が報告されています1)。インターネットでのアンケート対象者は、アジア(36%)、アフリカ(40%)、ヨーロッパ(21)%、その他(3%)と、全世界に及びます。その他の属性としては、①学歴としては、大学院(50.3%)、大学卒(37.9%)、その他(11.3%)、②未婚(43.5%)、既婚(53.7%)、③雇用形態として、会社員(51.5%)、学生(24.7%)、自営業(7.1%)、その他(16.7%)、④健康状態は91.3%の方が問題なく、7.7%の方が何かしらの健康リスクを抱えている方でした。

アンケート結果では、1日の座っている時間が平均5時間から8時間に増加し、激しい運動からウォーキングまでの運動強度別にみると、すべての強度で運動時間が平均で2割から3割減少しました。さらに、食事も不健康な食事(糖質や脂質が多く、食物繊維やビタミンが少ない食事)の頻度が増加し、スナック菓子などの間食の摂取機会も増していました。すなわち、コロナ禍では、糖質の摂取量が増えたり、運動時間が減ったことで摂取した糖質が消費されにくい生活環境になったといえます。

「健康日本21」では、成人の1日の目標歩数は男性9,200歩、女性8,300歩としています2)。2010年に東京都のサラリーマンの運動量を測定した報告では、電車通勤男性で9,305 ± 2,651歩であるのに対し、車通勤男性になると約3分の1の3,490 ± 1,406 歩になり、大きく異なっていました3)。コロナ禍では、通勤を避けて在宅ワークが推奨されましたが、一方でこれは運動量減少の大きな要因になります。さらに、生活への不安によるストレスの増加4)や睡眠不足5)なども懸念されており、ますます糖化のリスクの高い生活環境になったといえます。

飽食の時代となり、ヒトが糖質の豊富な食事を摂り始めたのはここ数十年のことです。ですので、ヒトのカラダには過剰な糖質に対して十分な備えがありません。新型コロナ感染拡大の影響で、糖化のリスクの高い生活習慣に偏りつつある今、運動習慣や食生活の見直しなど、カラダの糖化へのケアが必要かもしれません。

引用文献:

1) Nutrient 2020, 12 1583, doi:10.3390/ nu12061583
2) http://www.kenkounippon21.gr.jp/ 
3) 産衛誌 52: 133–139, 2010
4) https://plaza.umin.ac.jp/ ~dp2012/ covid19survey.html
5) https://www.shibukei.com/ release/ 42643/

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