マンゴスチン水溶性ポリフェノールの研究とロダンテノンBの発見

マンゴスチンの紫色の果皮は、タイでは古くから民間薬として、皮膚感染症や外傷、赤痢、下痢などに用いられてきた歴史があります。果皮にはα-マンゴスチンに代表されるキサントンが豊富に含まれる他、フラボノイド、アントシアニンなどが含まれます1)。α-マンゴスチンの機能については多くの報告があり、抗炎症作用、抗癌作用、抗菌作用が知られています2)3)4)。α-マンゴスチンは水に溶けないことから、マンゴスチン果皮をアルコールで抽出したエキスが造られ、アメリカなどでサプリメントなどに利用されています5)

一方、マンゴスチンの水溶性ポリフェノールについては、その成分や有用性についてはほとんど知られていませんでした。2006年に、マンゴスチンの水溶性成分が神経細胞を酸化ストレスから保護するということが報告されました6)。その後、マンゴスチンの水溶性ポリフェノールはα-マンゴスチンよりも抗酸化作用が強いという報告がなされました7)。水溶性成分は容易に抽出でき、食品にも利用しやすいという利点があります。

当時日本新薬は、マンゴスチン果皮の熱水抽出物に、AGEsの生成を抑制する作用がないか評価し、医薬品の候補にもなったアミノグアニジンより強いAGEs生成抑制作用があることを見出していました。その活性成分を探すため、マンゴスチンの熱水抽出物に含まれる水溶性ポリフェノールを1つ1つ単離しました8)。このとき、マンゴスチンから未だ見つかっていない成分を得ることができ、化合物名を同定したところ、「ロダンテノンB」という化合物でした。その後、「ロダンテノンB」はAGEs生成抑制作用をもち、マンゴスチンエキスの抗糖化作用に大きく寄与することが明らかとなりました。

引用文献:

1) Phytother Res 23, 1047-1065, 2009
2) Food Chem Toxicol 46, 688-693, 2008
3) Int J Mol Sci 9, 355-370, 2008
4) J Oral Sci 51, 401-406, 2009
5) J Nat Prod 71, 1161-1166, 2008
6) Med Princ Pract 15, 281-287, 2006
7) Pharm Biol 48, 55-62, 2010
8) J Agric Food Chem 63, 7670-7674, 2015

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